ルネッサンスの光と闇: 芸術と精神風土 (中公文庫 M 335)

著者 :
  • 中央公論新社 (1987年4月1日発売)
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イコノロジーの方法に基づいて、ルネッサンスの絵画とその時代背景に迫る試み。

ルネッサンスは「人間性の発見」の時代だと言われる。だがそのルネッサンスは、サヴォナローラによる「虚飾の焼却」が荒れ狂った時代でもあった。ルネッサンスの人びとの見ていた「現実」は、現代の私たちの理解するそれとは異なっていたことが理解されなければならないと著者は言う。そして、とりわけマルシリオ・フィチーノやピコ・デラ・ミランドラらの新プラトン主義の思想からの影響を、ルネッサンスの絵画のうちに読み取っている。中でも、フィチーノによって四性論における「憂鬱質」が創造的人間の特質としてみなされるようになるという価値の転換がおこなわれたことが、新しい時代の芸術家たちに及ぼした影響や、新プラトン主義的な「愛」の思想がさまざまな絵画の主題として取り上げられるようになったことなどが、詳しく解説されている。

また、ジョヴァンニ・ベルリーニの『神々の祝祭』という絵画がたどった運命を詳しく追うことで、ルネッサンスにおける「愛」の思想の変遷を解明してゆく考察が展開されている。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 文庫版
感想投稿日 : 2014年6月22日
読了日 : -
本棚登録日 : 2014年6月22日

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