ハンナ・アーレント - 「戦争の世紀」を生きた政治哲学者 (中公新書 2257)

著者 :
  • 中央公論新社 (2014年3月24日発売)
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本棚登録 : 1164
感想 : 113

ハンナ・アーレントの本は、何がきっかけだったかはっきりと覚えていないけれども、読んでみたいと思っていた。難解であるということは聞き知っていたので、最初に「100分de名著」で読んだ記憶がある。
そこで思想の全体像はなんとなくわかった気になり、図書館に出向いたところ、アーレントの著作がずらっと並んでいるのを見つけた。嬉しくなって『活動的生』『全体主義の起源1』『エルサレムのアイヒマン』を調子に乗ってまとめて借りた。
題名からして、『活動的生』が今の興味に一番近いように思って手に取ってみたところ、わかるようなわからないような…とにかく聞いていた通り、気軽に読み通せるものではないことがよくわかった。

そんなことをつぶやいてみたら、知人にこの本を教えてもらい、手にとった。経験が思考を促し、思想、そして著作として生み出されていったということが、アーレントの生涯と共に語られることで伝わってくる内容。
アーレントの言葉というよりも、この本の著者の矢野久美子自身の解釈による言葉が、今の私にはしっくりくることが多かった。本書を片手に、あるいはまた別の本も携えながら、アーレント自身の思考の跡を辿るというのは、とても面白い経験となりそう。

今の私にとって最も共感する言葉を以下に引用する。

p.222
「アーレントは、『思考の営み』はけっして職業的思想家のものではなく、すべての人びとが日々必要とするものだと断言している。それは、抽象的に思考したり、神や不死や自由といった究極的な問いに答えたりすることではない。『半時間前に自分に起こったことについてストーリーを語る者はみな、このストーリーを形にしなければなりません。このストーリーを形にすることは思考の一つの形態です』とアーレントは言った。 」

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 哲学
感想投稿日 : 2021年11月28日
読了日 : 2021年11月24日
本棚登録日 : 2021年11月16日

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