サムライ・レンズマン (徳間デュアル文庫 ふ 1-1)

著者 :
  • 徳間書店 (2001年12月1日発売)
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感想 : 12
5

再読、実に明朗快活正統派スペオペ!かつてのSFの懐かしくも新鮮な匂いを振りまきつつ、敢えてのサムライが秀逸!アクションその他のバランスも抜群、良作!

個人的に「レンズマン」はかつてのアニメが障壁となって苦手意識の強かった。アニメもあるいは今見れば多少は評価が変わると思われるが、幼少時の自分にはあまり魅力が感じられず、また何より「レンズ」と言う設定の難易度が(当時は)高過ぎて食わず嫌いが続いていた。
その後、あのアニメ自体、実験作としての側面が大きく、原作ファンの支持も微妙だったとの噂を聞いたが、それが真実であれば実に勿体ない。

それはさておき「サムライ・レンズマン」である。
外伝とは言え原作者の御遺族の許可を得ての正統な作品との事で、その分設定などにとらわれ窮屈な作品では…と危惧するも全くの杞憂、実に闊達な物語である。

何より「サムライ」、西洋人の誤解の中の日本を敢えて描く試みは既に様々な場で行なわれているものの、それが正統派スペース・オペラ、なかんずく「レンズマン」と言う誰もが名を知る大作の中に登場する新鮮さは筆舌に尽くし難い。超人的なアクションの全てがこのギミックにより血肉の通ったものとなるのも素晴らしい。

さらにその人間離れした活躍と表裏一体である非人間的な精神を鋭く看破する場面があるのも快い。詳しくは本書を読んで頂くより他無いが、この場面がために物語に一層の味わいが加わったと断言出来る。

蛇足だが、「サムライ」と言いつつやはり海外イメージの戯画化されたもうひとつの日本人像、「頻りにお辞儀をする愛想笑いを浮かべたサラリーマン」が登場するのも興味深い。
単純に面白がるのも一興、また深読みするのも自由、リーダービリティにも優れたシンプルな構成が自在な読み方を読者に提供してくれるのも魅力の一つである。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2011年4月10日
読了日 : 2011年4月8日
本棚登録日 : 2011年4月10日

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