民主主義は終わるのか――瀬戸際に立つ日本 (岩波新書 新赤版 1800)

著者 :
  • 岩波書店 (2019年10月18日発売)
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政治関係の著書を読む場合、著者がどの立場にいる人かをあらかじめ知った上で読む必要がある。

この人は長年民主党のブレーンとして活動してきた人で、現自民政権に批判的な立場であることは容易に想像できる。

それを踏まえた上で読んでも、決して盲目的な自民党批判ではなく論理的に、要所をとらえて批判している。

安倍総理が国会答弁等において言葉を崩壊させているというのはまさにその通りで、問われていることに対しわざと論点を外した受け答えをしたり、空虚で実のない言葉を羅列したりということを繰り返している。

著書では、行政府に権力が集中し、三権分立のバランスが崩れている状況を踏まえた上で、今後の提言もまとめている。いずれもおっしゃる通りなのだが、言うは易し行うは難しである。

ここからは著書とは関係ない個人的な見解だが、このコロナ禍においても行政府はやりたい放題の政策で国民を愚弄し続けており、それに対して国民は「国会議員は国民のために働くべきなのに自分たちの利益ばかり考えている」とSNSあたりで言い続けている。しかし、そもそも国会議員が国民のために働くことが当たり前という幻想を抱いていること自体がナンセンスだと私は思っている。

現代の日本人は「民主主義は生まれたときから当たり前のように存在する」ものであり、それがかつて民衆が血や汗を流して勝ち取った権利であることに無自覚である。なので、国民は当たり前に基本的人権を有し、そのために国会議員が奉仕すべきだ、などという幻想を抱いてしまう。しかし、国民が当たり前に基本的人権を有し、国民の代表である国会議員がそれを実現するために動くようにするためには、そのための仕組みを国民の努力で維持していく必要がある。今のように国民が政治に無関心で、受動的な立場を続けていれば、政治家はそれに味をしめて、自分たちの有利な方へ仕組みを変えていくに決まっているのだ。

もし、民主主義を保ちたいのであれば、もっともっと自分たちの暮らしにおける政治との関わり方に関心を持ち、政治家の行動に目を光らせて、それを選挙や世論という形で大きく反映させる必要がある。「自分たちは政治とかは難しいからよくわからないので好きなことだけやる、でも政治家は自分たちのために行動してほしい」なんて虫のいい話はないのである。

そういう意味で、こういう本を多くの人が関心を持って読んでほしいものだと切に願う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2020年8月12日
読了日 : 2020年7月10日
本棚登録日 : 2020年8月12日

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