愛が挟み撃ち

著者 :
  • 文藝春秋 (2018年1月30日発売)
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感想 : 25
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舞台のシナリオも書いている(そちらが本業?)前田司郎による、芥川賞候補作。

子供を欲しがる中年夫婦。不妊症の夫が持ち出した解決策は、親友に精子提供してもらうこと。学生映画、演劇を背景に、かつての夫、親友、妻の関係性が徐々に浮き彫りになる。その描き方にしびれた。表現もみずみずしく、読んでいて飽きない。

親友が同性愛者であることが、終盤に明かされるが、読み進めるとなんとなくそんな気もしていて、はっきりとはやはり明言されないので、分かった時点でもう一度初めから読み直したい、と思ったほど。それほど、展開を楽しめた。

最後の解決方法は気味が悪く、他の口コミでもレイプを思わせられたと書かれていた。だからこそ、愛とは、という主題がより鮮明に感じられたようにも思う。良書。

読了後、3日ほど空けて再読してみた。登場人物3人の些細な仕草や物事の見方が、結末を知っているからこそ、より明確に、そういうことかと理解できた。

振り向かせたい人は振り向かず、愛情を与えたい人に与えられない。どうあっても切ない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2019年10月31日
読了日 : 2019年10月31日
本棚登録日 : 2019年10月31日

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