のろのろ歩け

著者 :
  • 文藝春秋 (2012年9月27日発売)
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感想 : 59
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「オール讀物」に2010年から各年一作ごとに発表された読み切り三作品を収録。

アジアの三都市、北京、上海、台北を舞台に、それら異国の地での人との出会いを、ワーキング・ウーマンや駐在員の妻、そして恋に破れたOLなどの視点から描き出していく。

「北京の春の白い服」では、経済開放政策が花開き始める直前の1998年の北京が、第二の主人公のように描かれる。中国初の女性ファッション誌を創刊するためのブレーンとして北京を訪れる30代の日本人編集者は、新旧入り乱れながら発展の足がかりを得ようとやみくもに前進するエネルギッシュと混沌に包まれる北京に酔う。

同じように「時間の向こうの一週間」に登場する日本人駐在員の妻は、急速な経済発展の成果で高層ビルが立ち並ぶ上海で、アパート探しのさ中に上海租界の幻影にあてられる。

三作目の「天燈幸福」では、亡き母の思いの人を訪ねる日本人OLが、のどかな台北郊外の風景と古き良き日本語を話す老人たちに出会い不思議な感慨に包まれていく。

近くの異国の神秘といかがわしさ、そしてエネルギッシュでありながらもカオスのような社会システム。三都市を良く知る人も知らぬ人も、それぞれの都市の持つ魅力と魔力を、三つの作品を通して垣間見ることができるだろう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2012年11月2日
読了日 : 2012年11月3日
本棚登録日 : 2012年11月2日

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