坂口安吾のリアリスティックな人間観は、本質を突いている。弱さから美徳を求めるのが人間であり、美徳から逃れて堕落するのも人間である。自分自身の美徳を編み出すためには、「正しく堕ちる」必要がある。
絶対的な価値観の崩壊を引き起こした戦後は、まさに「正しく堕ち」、自らの美徳を編み出す大きなチャンスだったのだろう。しかし、日本はこのチャンスをふいにしてしまったように思えてならない。西欧の価値観を追従し、美徳について問うことを忘れてしまった現代の日本は、美しさすら失った、運命に従順な人間の姿のように思える。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
未設定
- 感想投稿日 : 2023年9月10日
- 読了日 : 2023年9月10日
- 本棚登録日 : 2023年9月10日
みんなの感想をみる