中身以前に装幀が美しい。海の色を写したブルー。
少年がスリランカからイギリスへ船で旅をする。少年が船中で出会う人々や事件によって子供時代を脱する成長物語であり、パマナ運河の場面の鮮やかさに見るように旅行記であり、人間関係の謎解きが隠されたミステリーでもある。読み手も、この青い大海原をゆっくりと旅しているような読書体験だった。
オンダーチェは「イギリス人の患者」以来だが、うまい。特に少年マイナ=疑似作家本人が大人になってからの場面と交錯する加減が絶妙だ。船旅は、マイナ=マイケルにとって、特別でドラマが凝縮された人生の一コマ。11歳にしてクライマックスを迎えてしまったようだ。その後の人生では、初恋の従妹エミリーとの再会、船の中の親友たちとの別れなど、切なさが漂う。
全体のトーンに対して「事件」があまりにヴィヴィッドで、違和感があるほど劇的だと感じたが、これはフィクションを貫くための作為か。ただし、それもあって映像的な印象がある。映画化して欲しいと思わせる。監督はもちろんミンゲラといいたいが、かなわないのが残念だ。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
海外
- 感想投稿日 : 2015年6月25日
- 読了日 : 2013年12月6日
- 本棚登録日 : 2015年6月25日
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