私に似た人

著者 :
  • 朝日新聞出版 (2014年4月8日発売)
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主人公が10人の短編から構成されていて、それが少しずつ繋がっている。

『小口テロ』が、頻発するようになった日本
ひとつひとつのテロは単純な無差別殺人の様だが、実行犯は皆『レジスタント』と名乗っていた。
犯人達に接点は無く、特定の組織が関与している形跡も無かった。
ただ、彼らは皆いわゆる社会の底辺にいる所謂貧困層に属してした。
警察に捜査により、事件の陰にSNSで犯人に接触していた
『トベ』という人物が居る事か゜判明する。
しかし、『トベ』は一人ではない……。

たしかに、聞いていた。
就職氷河期・非正規雇用・派遣切り・ブラック企業・働けど働けど生きるだけで精一杯・
違法ハウス・他人に無関心・貧困層・引きこもり・いじめ・……。
何処か、他人事のように感じていた。
また、ニュースで言っててる…。
だが、それは現在の日本の姿…。
閉塞した日本の抱える暗部が、とてもリアルに描かれている。

様々な登場人物がいた。
 『小口テロ』を起こした犯人達
 事故現場で被害者を介抱した女性・傍観者・写真に撮る人
 犯人の勤める会社の上司やその妻
 事件を担当する公安の刑事
 一流会社に勤めるも、社会に不満を持つ人
 社会に意見を持つ彼を飛び越して行動に移す彼女
 犯人を見下す人
 家族を亡くし生きる気力を失った人
 トベを憎み仇をうとうと決意している親
捉え方は人それぞれだし、感じ方も人それぞれだろうけど
その中に『私に似た人』が、きっといるはず
それとも、他人に無関心なただ傍観しているだけの人々、他人の痛みが想像出来ない人々
そんな『私に似た人』が大多数の日本を嘆いているのか?

最後の終わり方は、少し残念な気持ちになりましたが、
憎悪の一滴を垂らすだけで…誰かに少しでも背中を押されるだけで…
誰しもが色々な意味での加害者にもなりうり、被害者にもなりうる怖さ…
日本社会の現在の問題にに真摯に向き合った作品だと思いました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ミステリー
感想投稿日 : 2016年2月24日
読了日 : 2014年9月1日
本棚登録日 : 2016年2月24日

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