世界の果てのこどもたち

著者 :
  • 講談社 (2015年6月18日発売)
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昭和18年の戦時中、高知の山間の貧村から開拓民として
移住する親に連れられて満州にやって来た珠子。
故郷の村と同じ最果ての地で、珠子達の新しい生活が始まった。
生活に馴染んでいく中、珠子は朝鮮人の美子と友達になる。
ある日、裕福な貿易商の娘・茉莉が横浜から訪れ
3人で遠くのお寺へ行くという冒険をする。
大雨で川が洪水し、3人だけでお寺で一晩を過ごすという
忘れ難い一夜を過ごし、友情で結ばれる。
しかし、日本の戦局の悪化によって3人は別々の人生を歩むことになった…。


三人はそれぞれ別々の場所で終戦を迎える。
横浜で空襲に遭い肉親を全て失い茉莉だけがどうにか生き残る。
朝鮮・満州を経て日本に渡る美子。
美子は日本で在日として生きていく。
満州で終戦を迎えた珠子。
中国人達やソ連に襲われながら、日本に引き揚げる為
逃走し続ける。開拓民の家族達。
映画やドラマやドキュメンタリー番組等で知っているつもりだった…。
しかし、本当に過酷・悲惨・酷い…どんな言葉でも言い表せないその姿。
読むのが辛かった。苦しかった。投げ出したかった。
でも、知らなきゃいけない…読まなきゃいけない…。
その思いで涙を流しながら読み進めていきました。
珠子は収容所で難民と暮らしていたある日突然
人さらいにあい中国人夫婦に売られ、中国残留孤児として
中国人夫婦に育てられる。

出自も境遇も育った環境も置かれた状況も違う
三人の少女の視点で戦争が淡々と語られる。
三人の少女の生き様から戦争を色んな面から描き出している。
何となく知っていると思ってた戦争だけど、知らない事が多かった。

戦争の悲惨さを伝える物語です。
しかし、それ以上に少女達の生き様が輝いていました。
与えられた環境の中で、どうやって精一杯生きるのか。
これは、今を生きる私達にも通じるテーマだと思った。
平和な時代に生まれ、暮らしている事に感謝し、
戦争は二度と繰り返してはいけないという思いを強く抱きました。

二度と戦争はしない!と誓ったはずなのに70年経った今、
日本は再び戦争をする国へと進んで行きそうな岐路にある…。
今だから、多くの人に読んでもらいたい作品でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 戦争小説
感想投稿日 : 2016年3月2日
読了日 : 2015年7月25日
本棚登録日 : 2016年3月2日

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