★3.5
日本ファンタジーノベル大賞受賞のデビュー作。
この世の終わりならふたりの全てが許される。
奄美の海を漂う少女の元に、隻眼の大鷲が舞い降り、語り始めたある兄妹の物語。
親を亡くし、一生を下働きで終える宿命の少年フィエクサと少女サネン。
二人は「兄妹」を誓い、 寄り添い合って成長したが、
いつしかフィエクサはサネンを妹以上に深く愛し始める。
人の道と熱い想いの間に苦しむ二人の結末は――。
死んでもいいと思い、運命を任せようと奄美の海でカヤックに乗り
パドルを捨て漂っていた茉莉香。
しかし、夜の海で苦しんで死んでいくのが怖い怖いと震えている時、
カヤックの艇首に大きな鷲が止まった。
鷲は江戸時代の家慶公の時代からずっと海を飛び続けていると言う。
江戸時代の奄美の史実に基づいた緻密な歴史の描写。
そこに生きる人々の姿が描かれていた。
ファンタジー小説と言われていますが、歴史小説を読んでいる様だった。
知らなかった。知らなかった。
奄美にこんな歴史があったなんて…。
まるで奴隷制度だ。こんな過酷な歴史があったんですね。
200年前の奄美の血の繋がりはない兄妹のお互いを想う気持ち故の苦しみ。
そして、現代の自分の為に兄が苦しんで死んだ。
あれで良かったのかと迷い迷っている妹の兄への愛。
現代はともかく…200年前の神に誓った兄妹の互いを想う気持ちは、
とても切なく、とても哀しく、とても哀れで可哀相。
あまりにも哀しいお話なので読んでいて辛かった。
時代は違えど、200年前と現代考え様によっては似ている。
富める者はドンドン富。貧困にあえぐものは負の連鎖でいつまでも抜け出せない。
「おまえも一粒の椎だ」
誰かが必ず拾ってくれるって言いたかったのかな。
希望を与えてくれようとしたのかな。
哀れな鷲を思い、この世のおわりが来ることを願った…。
- 感想投稿日 : 2020年1月18日
- 読了日 : 2020年1月18日
- 本棚登録日 : 2020年1月18日
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