民のいない神 (エクス・リブリス)

  • 白水社 (2015年2月13日発売)
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オカルトに対する忌避の感情は、どこから生まれるのか。本書を読んで唯一といってもいい脳の反応は、その問いに対する答えを求めようとする時だけであるように思う。オカルトという言葉を実は宗教に置き換えても同じことであるとも思うのだが、そこに歴然とした差を認識する人もまた多いことも理解している。その説明出来るような出来ないような差について本書は描いているとも言えるし、何も語っていないとも言える。要するに、ここには解りやすいプロットやテーマのようなものはなく、深く感動するような物語があるわけでもないのだが、妙に気持ちがざらつく感じが残るのである。

オカルト的なものの手強さは、思考停止状態の人間に思考を強要する時の手強さということ。あるいは、存在の証明が出来ないことが、非存在の証明ではないとする、二律背反から抜け落ちた論理の手強さと言ってもよい。この考えることを止めさせ、やたら、感じなさいとか、信じなさいとか、言い寄って来るの者の放つもの、それが忌避を呼ぶものの本質だと自分は思う。その対象が神と呼ばれるものてあろうと高い文明を持つとされる宇宙人であろうと違いはない。

神は自らを助くる者を助く。その言葉の中の神の役割を、触媒のようなものだと考えるか、救済者として捉えるか。そのことばかりが頭の中をぐるぐると巡って止まない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2015年5月27日
読了日 : -
本棚登録日 : 2015年5月27日

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