わずか6日間の滞在で、日本人の心を魅了した31歳のブータン国王。
日本が大切にしてきた価値観を讃え、希望と勇気をもたらした、来日中の活動のご様子を、通訳として同行した著者が語ります。
以下は、本書「はじめに」より……
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2011年11月15日、ブータン王国第五代国王ジグミ・ケサル・ナムギャル・ワンチュク陛下と同王妃ジェツン・ペマ・ワンチュク陛下が国賓(外国の元首・首相など、公式に来訪し、国家の大切な客人としてもてなされる外国人)として来日されました。その「小さな王国」の若きご夫妻のご滞在は、6日間という限られたものであったにもかかわらず、日本国中に大きな感動と反響を巻き起こしました。
ブータン王国は、インドと中国(本来はチベット)に隣接する南アジアの国で、九州とほぼ同じ大きさの国土に、約70万人が暮らしています。
ワンチュク国王陛下は、御父君である第四代国王陛下の命を受け、26歳の若さで2006年にブータン王国の第五代国王となられました。
王位継承後の数年間は、インド以外への外遊はなさらず、国民との対話に最も力を尽くされました。国内の情勢をすみずみまでお知りになるため、山間部の農村まで自らの足で歩いて回られる若き王様は、いまや国民から絶大な支持を得ています。
日本とブータンは国交を結んで25年を迎えました。第五代国王陛下の国賓としてのご来日は、その記念行事として2011年5月に予定されていましたが、東日本大震災があり延期されていたのです。
しかし、ワンチュク国王陛下は「こういう時期だからこそ一刻も早く日本を訪れ、亡くなられたかたがたのためにご冥福を祈り、そしてご遺族を励ましたい。日本がいま国を復興させようという時に、連帯の意を表したい」という明確なご意志をお持ちだったことから、今回、祈りを捧げるためのご訪日が実現しました。
国王陛下はその前月にジェツン・ペマ王妃と結婚式を挙げられたばかりで、ご夫妻にとってお二人そろっての初の海外訪問先としても、日本を選ばれたのでした。
ブータンの人々は日本人とよく似た容姿でもあり、親近感を抱くのも当然ですが、国王陛下に対する印象はそれだけではありませんでした。
今回のご訪日ではたいへん多くのかたがたから、
「国王陛下の謙虚でありながら堂々とした言動に感銘を受けた」
「素晴らしいスピーチに励まされた」
という声が聞かれたのです。
ワンチュク国王の一挙手一投足に、日本の皆さんが大いに共感し感動を覚えたのは、どうしてだったのでしょうか?
ワンチュク国王陛下が日本に届けてくださったものは何か、通訳としてご同行し、間近で接した立場から、ご訪日の様子を振り返りながらお話ししていきたいと思います。
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大人はもちろん、この国の未来を担う若い人たちに、ぜひよんでほしい一冊です。
- 感想投稿日 : 2012年4月26日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2012年4月26日
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