没後20年号「司馬遼太郎の言葉」 (週刊朝日ムック)

  • 朝日新聞出版 (2015年12月10日発売)
3.80
  • (1)
  • (2)
  • (2)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 42
感想 : 3
4

司馬遼太郎は1996年に没し、今年は没後20年となる。
当時(1996年)の読書録を見ると、この年は、私の愛読していた、司馬遼太郎(2/12)、遠藤周作(9/29)、高坂正堯(5/15)の3名が鬼籍に入っている。
当時読書録の交換をしていた私の先輩の読書録には、「司馬遼太郎の訃報に接した時、一度も会わず、一度も喋ったことのない人が亡くなって、こんなショックを受けたのは初めてです・・・(略)・・・そういえば、寅さんだって逝っちまって・・・小説も映画も、これっきりであとがないなんて、寂しい限りじゃござんせんかよ、ねぇ」
この洒脱な先輩も命を絶ち、もうこの人の読書録も読めなくなってしまった。

今回この本を手にして、当時の衝撃を思い出す。それほどまでに当時の読書人の衝撃は大きかった。あれから20年かぁ・・・・・

司馬遼は「韃靼疾風録」を最後に小説を書かなくなり、晩年は週刊朝日の「街道をゆく」、文藝春秋の「この国のかたち」、産経新聞の「風塵抄」に絞り込んでいた。
今回は主に「風塵抄」にスポットを当てた編集になっているが、それよりも面白いのは、磯田道史のインタビューと安部龍太郎×葉室麟の対談。

磯田道史のインタビュー
彼は浪人をしながら京都府立大学の学生でもあり、その時の渡辺信一郎の授業を受けてから、司馬遼の小説の読み方が、普通の読者と違う読み方を始めたという。
作品は「項羽と劉邦」。「史記」の原文と「全現代語訳」を横に置いて、照らし合わせながら、「史記」がどのように司馬文学に化けているのか調べたそうです。「司馬さんがどこを膨らませたか、資料には残ってないところをどう補っているか。虚構と史実との間を正確に述べた授業でした。・・・(略)・・・それ以降、司馬作品を読む時には、必ず司馬さんが使ったであろう元資料を集めてから読むようになったのです。ちょうど18歳のときです」
将来歴史家になるべく人は常人と違う事をやっているというか、興味の持ち方が違うようです。

「安部龍太郎×葉室麟」の対談
直木賞作家であり、歴史小説家の対談。
彼らの世代の歴史小説家は、司馬遼のようになりたいと思ってスタートを切ったという。その結果、
安部:司馬さんを意識すると自分のものが書けなくなる・・・巨大な引力に引きずられるのを恐れるように、これまでずっと距離を置いてきました。
葉室:司馬さんを読むと、書かれている物語が本当の歴史だと思ってしまう。
安部:そういう点では、司馬さんとの闘いを通じて大人になっていくような感じですね。
以下面白い対談ですが、省略。

司馬遼のファンなら是非お勧めします。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2016年1月2日
読了日 : 2016年1月2日
本棚登録日 : 2015年12月23日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする