「司馬遼太郎」で学ぶ日本史 (NHK出版新書 517)

著者 :
  • NHK出版 (2017年5月8日発売)
3.75
  • (61)
  • (138)
  • (83)
  • (20)
  • (5)
本棚登録 : 1119
感想 : 118
4

本書は2016年3月に放送されたNHK「司馬遼太郎スペシャル(100分de名著)」の内容に加筆、再構成したものであるが、イメージはかなり違った作品になっている。
つまりより歴史家としての司馬遼太郎にスポットを当てている。

坂本龍馬の「龍馬」と言う名を「竜馬がゆく」と文字を使い分けているように、司馬本人は自分はあくまで小説家であって、歴史家ではないと言っているが、世間は「司馬史観」としてあたかも歴史家として見ているという面白い現象がある。

ただ歴史学者と言われる大学教授が「司馬遼太郎」を論じることはなかったが、大学生は大学教授の本よりも司馬遼太郎の本を読んでいる。
そういう私自身を翻ってみても、学校での日本史の授業は眠いばかりで頭に入っておらず、日本史の知識は司馬遼太郎の小説やエッセイ・史論からかなりの部分を学んだという記憶がある。

その意味で本書は、歴史学者である著者が「司馬遼太郎」を正面から取り上げ、司馬作品から入って、体系的に戦国時代から昭和までの日本史を論ずるという面白い試みである。

著者は、「司馬遼太郎は、作家であると同時に、歴史について調べ、深く考えるという意味においては歴史家でもありました。しかし他の歴史家と、司馬さんは一線を画しています。司馬さんは、ただの歴史小説家ではありません。『歴史をつくる歴史家』でした。」
「戦争体験を持つ司馬さんは、『なぜ日本は失敗したのか』『なぜ日本陸軍は異常な組織になってしまったのか』という疑問から、その原因を歴史のなかに探りました。」

ということで、時代的には「国盗り物語」から昭和に至るまでの司馬作品(小説・エッセイ含む)を通じて、司馬遼太郎が日本の歴史をどのように捉えていたかを探る旅に導いてくれます。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2017年5月21日
読了日 : 2017年5月21日
本棚登録日 : 2017年5月21日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする