司馬遼太郎スペシャル 2016年3月 (100分 de 名著)

著者 :
制作 : 磯田道史 
  • NHK出版 (2016年2月25日発売)
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本棚登録 : 144
感想 : 14
5

「歴史家」磯田道史が、「文芸評論家」としての才能を十二分に発揮した本だと思う。司馬遼太郎を縦横無尽に語りつくす面白さは、司馬遼太郎の小説を読んでいるような錯覚さえ起こす。著者がこれほど文芸評論家としての才能があるとは、正直驚いた。
「100分で名著」というダイジェスト版ではなく、完全な「司馬遼太郎論」として完成している。
特に、司馬遼太郎自身が生涯のテーマとして取り上げた、昭和ヒトケタ~昭和20年までの「鬼胎の時代」について、最終章で司馬遼太郎の思いを丈を存分に述べているのは圧巻である。

ただ、取り上げた作品が、「国盗り物語」「花神」「『明治』という国家」「この国のかたち」の4冊ということで、ふと疑問が湧く。
司馬自身が好きだった作品は、「燃えよ剣」「空海の風景」と本人は言っているが、読者側から見た司馬の代表作と言えば、巷間言われているのは「竜馬がゆく」「坂の上の雲」の2冊は確定で、あとは人により意見が分かれるが、「燃えよ剣」「花神」「播磨灘物語」「菜の花の沖」あるいは「街道をゆく」の中から選ぶだろうと思う。それが上記の4冊ということで、ふと気がついた。
国盗り物語・・・・・・・1973年NHK大河ドラマ
花神・・・・・・・・・・1977年NHK大河ドラマ
「明治」という国家・・・1989年NHKスペシャル「太郎の国の物語」
この国のかたち・・・・・2016年NHKスペシャル

もっともこれ以外でも、NHKは司馬の作品に関しては、かなり多くを取り上げて放送している。特に近年放送されたのは「坂の上の雲」。この作品は代表作中の代表作で、普通なら絶対に外せない・・・が、外されている。
「『明治』という国家」と「坂の上の雲」は共に対象となる明治という時代がかぶっているので、どちらかの選択になるが、「『明治』という国家」を選んでいる。
理由は、この作品は、司馬遼太郎自らカメラに語りかけるトーク・ドキュメント(放送では「太郎の国の物語」)で、この手の番組としてTVに6回も連続して司馬遼太郎が出演した唯一無二の「伝説の番組」なのである。NHKとしては、これを外す訳には行かなかったのだろう。
ただ、最後に言っておくと、著者はこの4冊に囚われることなく、他の作品も含めて縦横無尽に語りかけてくる。
司馬ファンにとっては、見逃せない「司馬遼太郎論」である。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2016年2月27日
読了日 : 2016年2月27日
本棚登録日 : 2016年2月27日

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