【虚像】 高杉良さん
オリックスをモデルにした経済小説。
行動力があり、押しが強く、政治力にも長けている
ワンマン社長の加藤。
その加藤に仕え、一介のノンバンクだったワールド
ファイナンスを巨大なコングロマリットへと成長させる
一翼をになった井岡堅固。
大泉首相と竹井経済相が推し進める規制緩和と強引な
不良債権処理でワールドファイナンスは巨額の富を得た。
留まるコトを知らない拡大路線を辿るワールドファイナンス
と加藤。
加藤の飽くなき欲望に多少の嫌悪感を持ちつつも
卓越した経営能力と判断能力に感服する井岡。
しかし米国発のサブプライムローン問題が、発展を続ける
ワールドファイナンスの頭上にも降りかかってきた。
サブプライムローン問題を「対岸の火事」とみなし、
さらに拡大路線を突き進もうとする加藤。
だが、拡大路線をとりすぎたワールドファイナンスは、
資金調達が困難になりつつあった。
☆
登場人物が現実の人物をモチーフに書かれています。
わたしは経済には詳しくないですが、書いてあることは
そのまま現実に当てはまるようです。
1990年からの経済をよく知っている人には
より以上に面白く読めるかもわかりません。
「不良債権処理」という言葉はよく聞きましたが、
どういう流れで債権回収会社へ渡ったかよくわかりました。
金融庁の監理のないノンバンクは引当金を積み立てる
必要が無いので銀行の債権を買い叩いたんですね。
そして、コングロマリットの強みを生かし、
グループ会社で再開発を行う。
大企業の一社独占ではなく、昔のように小さな工務店や
左官屋さんなど、末端にまで仕事が行くような仕組みを
為政者には考えてもらいたいと思います。
- 感想投稿日 : 2012年1月22日
- 読了日 : 2012年1月21日
- 本棚登録日 : 2012年1月22日
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