虚像 下: 驕りの代償

著者 :
  • 新潮社 (2011年9月30日発売)
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感想 : 10
3

【虚像】 高杉良さん

オリックスをモデルにした経済小説。

行動力があり、押しが強く、政治力にも長けている
ワンマン社長の加藤。

その加藤に仕え、一介のノンバンクだったワールド
ファイナンスを巨大なコングロマリットへと成長させる
一翼をになった井岡堅固。

大泉首相と竹井経済相が推し進める規制緩和と強引な
不良債権処理でワールドファイナンスは巨額の富を得た。

留まるコトを知らない拡大路線を辿るワールドファイナンス
と加藤。

加藤の飽くなき欲望に多少の嫌悪感を持ちつつも
卓越した経営能力と判断能力に感服する井岡。

しかし米国発のサブプライムローン問題が、発展を続ける
ワールドファイナンスの頭上にも降りかかってきた。

サブプライムローン問題を「対岸の火事」とみなし、
さらに拡大路線を突き進もうとする加藤。

だが、拡大路線をとりすぎたワールドファイナンスは、
資金調達が困難になりつつあった。



登場人物が現実の人物をモチーフに書かれています。
わたしは経済には詳しくないですが、書いてあることは
そのまま現実に当てはまるようです。

1990年からの経済をよく知っている人には
より以上に面白く読めるかもわかりません。

「不良債権処理」という言葉はよく聞きましたが、
どういう流れで債権回収会社へ渡ったかよくわかりました。

金融庁の監理のないノンバンクは引当金を積み立てる
必要が無いので銀行の債権を買い叩いたんですね。

そして、コングロマリットの強みを生かし、
グループ会社で再開発を行う。

大企業の一社独占ではなく、昔のように小さな工務店や
左官屋さんなど、末端にまで仕事が行くような仕組みを
為政者には考えてもらいたいと思います。

 

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 高杉良
感想投稿日 : 2012年1月22日
読了日 : 2012年1月21日
本棚登録日 : 2012年1月22日

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