エジプト十字架の秘密 (角川文庫)

  • KADOKAWA (2013年9月25日発売)
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感想 : 28
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絶対的名探偵の登場する、古典的ミステリが読みたかった。
有名なクイーンの作品を子どもの頃に読んだという人は多いかもしれない。しかし実のところ、ホームズやクリスティ、横溝正史等は夢中になっていたが、どういうわけか私はクイーンは読んでいなかった。
これまでに国名シリーズの「ローマ帽子」「ギリシャ棺」は既読。3作目になる。解説によると、国名シリーズの中では、「ギリシャ」と並び評価の高いものということだった。確かに面白い。これも解説の受け売りになってしまうが、トリックの大胆さ、ロジックの鮮やかさを両立させることに成功している。また、陸・海・空と場面に動きがあり、いわゆるクローズドサークル的ではなく、名探偵自ら縦横に、果敢に行動していく様も躍動感があって良い。
ただ、以前にもどこかで書いたが、大胆なトリックVS緻密なロジックということであれば、私は個人的に後者が好みで、あっと驚くよりも解決に導く道筋の明快さ、鮮やかさでなるほどすとんと腑に落ちたい。
その意味で最終局面のわずかなほころびから論理的に犯人を指名する本作のエラリーの推理もやはりかっこいい。そしてトリックは・・驚きはしたが、トリックが大仰になると、犯人がそこまでするかな?とも思ってしまうのだった。
他にロジックでかっこよかったのは、「月光ゲーム」の江神さんだろうか。理系の方とか、もっと頭の良い人なら、もしかして推理小説の矛盾を突くことができるかもしれないが、ここでいうロジックというのは、あくまでフィクションとしてのものだと私は思う。
そして自分の考える理想の名探偵像を再確認したいという目論見は見事に達成された。勝手なことを言うが、探偵小説は、やっぱりある程度約束事というか一定の枠組みの中で成立してほしい。クローズドサークルや見立て殺人など、実際には起こり得ないとか、そういうことを言っても始まらない。事件があって、かっこいい名探偵がいて、必ず解決してくれる。私は正直なところそういう様式美のようなものだと思っていて、細かいあらや「他の正解」を探して回るのは趣味じゃない。
そのうち大好きな名探偵リストを書きたいと思った。青山剛昌先生にほとんど挙げられているだろうが・・

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年11月7日
読了日 : 2020年11月6日
本棚登録日 : 2020年11月6日

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