集団的自衛権をめぐる一連の議論について、内外情勢を踏まえた具体的・歴史的な分析を加えた上で、自民党の改正案を参照しつつ憲法改正問題についても言及し、最後にこれから日本の果たすべき役割を考えていくといった内容の本。
まず、集団的自衛権行使容認が閣議決定されたことについて、著者は、安保法制懇の「報告書」に批判を加えていく。最初に述べられたのが、集団的自衛権行使容認は、日本が確実に「戦争をする国」になるということを意味するということである。
また報告書では、行使容認の原因として「安全保障環境の悪化」を挙げるが、東アジアの具体的な情勢分析が全くされておらず、また集団的自衛権をめぐる議論の前提としてのイラク戦争の総括もなされていない。報告書に事例として載せられている、集団的自衛権が行使できる具体的なシチュエーションについても、今日の国際情勢を鑑みない「軍事オタク」の発想であるとして厳しい批判を加えている。
さらに、安倍首相が抱える「戦後レジームからの脱却」、すなわち「吉田ドクトリンからの脱却」と「東京裁判史観からの脱却」についても問題点を挙げている。これは戦後、米国主導の戦後秩序を否定する信条や論理を含んでおり、このような主張を掲げる政権が登場したこと自体が、日本の安保環境の悪化をもたらしているという。
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- 感想投稿日 : 2014年11月24日
- 読了日 : 2014年11月22日
- 本棚登録日 : 2014年11月20日
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