大人のための儒教塾 (中公新書ラクレ 635)

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  • 中央公論新社 (2018年11月8日発売)
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・人類は長きにわたり、家族が助けあって生きる「家族主義」の下で、農耕生活を営んできた。そして中国を中心とする東北アジアにおいて、家族主義の中から「儒教」が生まれた。

・儒教に対し、堅苦しいイメージを抱く人は少なくない。その背景には、江戸幕府が正統的学問とした朱子学の影響がある。
朱子学派は儒教を倫理・道徳として捉え、堅苦しい解釈をし、偏った解釈が広がり、定着した。

・儒教は、自分たちの祖先を祭る祖先祭祀を柱とする。家族主義から生まれた儒教において、祖先は家族や一族が共通して敬意を払う対象であり、精神的な支えとなるから。

・家族主義と祖先祭祀は古代ヨーロッパでも重視されたが、キリスト教が祖先祭祀を禁じたため、いずれも消滅した。同地では祖先への感謝ではなく、神への感謝がすべてとなった。

・江戸時代、儒教派と仏教派は争っていた。仏教は檀家制度の下、安定した地位にあったが、儒教にはそうした基盤がなかった。また、仏教は儒教が生んだ墓や祖先祭祀を取りこみ、儒教の商売を侵食した。こうしたことが争いの背景にある。

・明治維新後、仏教は神道の台頭により衰退した。儒教は、学校教育において倫理・道徳として採用され、生き残ったが、太平洋戦争後は次第に色褪せた。

・明治になり、西洋文明が入ってくると、日本人の倫理規範は大きな影響を受けた。宗教においては、一神教、中でもキリスト教が最高形態であり、仏教や儒教はそれ以下とされた。このような理解が日本の宗教界を支配していった。

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感想投稿日 : 2019年9月12日
読了日 : 2019年9月12日
本棚登録日 : 2019年9月12日

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