「TPP開国論」のウソ

制作 : 中野剛志 
  • 飛鳥新社 (2011年5月14日発売)
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本棚登録 : 120
感想 : 15
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政府やマスコミ、推進派が都合が悪いから口にしない目を逸らさせている事実を、数字をきちんと出した上で明確に書いてくれている。推進派はデータに全く基づかない数字か、そもそもデータ自体を出していない。都合が悪いと言うよりは机上の空論でもなく論理としてすら成立していない事が本当によく判る。念の為、TPP自体を否定している本ではない。TPPが効果を発揮する場合もしっかり書いた上で今の日本の状況と照らし合わせているだけ。環太平洋なんかでなく誰が見てもあからさまに日米FTA以外のなにものでもないでしょう、から始まり基本的な経済学の知識がある人からしたら当然の突っ込みを、数字を明確にしながら明瞭にひとつひとつ突っ込んでいってくれている。テレビだけを見てよく判ってもいないのにただ何となく賛成と言ってる人にこそ目を通して欲しい。そういう人はそもそもこんな本読もうとも探そうとも思わないだろうから残念。本当に全くこれっぽっちも経済学の知識がないと小難しい何言ってるか判らんとなるかもしれないけど、最悪判らない用語は飛ばしてでも一読すれば難しい事は書いてないし本題は理解できる。かなり判りやすく書いてある。判りやすいように数値も出してくれてるし。
何でこんな判りきった事を何度も書かねばならんのだろうとげんなりしているような気が勝手にするが、それでも声を上げる以外にないから書いているのだろうと思うと(ここまで勝手な想像ですね)頭が下がる。自分なんかはもう始めから参加する事は決めてしまってるんだから無駄だと諦めてしまってるので。そう、政府は「こうこうこういう効果があるから参加するのですよ」ではなく、参加するからこういう理由を上げとこう、という完全に主従がひっくり返った状態。だから論理として成り立ってないしめちゃくちゃなんだよね。とりあえず参加するまでなんとか誤魔化せればいいやっていう。だから調べもしないし。
一章は数字、実例を出した上で判りやすくひとつひとつ賛成派が言っている事のどこがどうおかしいか、を指摘。
二章の最初の方は、三割くらいはワイドショー的な要素も混じっているが、こうも不自然な事実だけを並べたら出てこざるを得ない推測だと思う。つまり、普天間で失策をやらかしたから何がなんでもTPP参加は決定してしまっている、と。これは興味を引くための前振りなだけで、その後はこちらも歴史的背景からどうしてTPPというものが出てきたかを述べ、そこから自ずと導き出されるアメリカの目的を書いている。導き出されるというかオバマさん明言してる事。
一章二章で実例、データからしっかり書いてくれて理解が深まったところで三章で俯瞰からの総体的な話。経済史思想から。かなり痛烈に苦言を呈しているが、肯首する事の方が圧倒的でした。マイケルサンデルは読んでないのでその部分は興味深く読みました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2011年11月8日
読了日 : 2011年11月8日
本棚登録日 : 2011年11月8日

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