検証 防空法:空襲下で禁じられた避難

  • 法律文化社 (2014年2月7日発売)
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朝ドラ『ごちそうさん』で一躍注目を浴びた防空法制について。研究者と弁護士の共著で,史料に基づいた事実を中心にして,政府による正しい知識の隠蔽,防空演習の無意味さ,相互監視による避難の困難性を描き出す。二度にわたる青森空襲では,初回の体験で空襲の現実を見,町を離れていた市民が,市の配給停止宣言を受けてやむなく舞い戻り,二度目の被害に遭っている。防空法が空襲犠牲者を増やした悪法であったことは,間違いないだろう。著者の関わった大阪空襲訴訟において,裁判所もそれを認める判断をした。判決の抜粋が収録されているが,これは著者らの主張を客観視する上でも有意義な情報だろう。
本書の何箇所かで言及されているのだが,原発事故やミサイル防衛計画に触れつつ,当時の政府ー市民の構図が現在も続いているとする見立てには違和感を覚えた。表現の自由や個人主義の普及,情報の流通拡大などを経て当時と今とは状況がまるで違っている。いささかミスリーディングで,本書の価値をやや減じているのではないだろうか。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 軍事・戦争
感想投稿日 : 2014年5月20日
読了日 : 2014年5月20日
本棚登録日 : 2014年3月1日

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