2021/8/18
序文は本当に素晴らしく、何度読み返しても感嘆する。
「鳥が空に棲むがごとく、魚が地球をめぐる水の中に呼吸するごとく、花が大地に根をおろしているごとく、人間の児童は真理の国に生活する」
この一文を軸に、グリム童話は真理の国に在る者が持つ「無垢の魂の発展の方向を決定する」書物だと言う。その背後には、「大自然の前に、(人間は)心をむなしくして跪座しなければならぬ」という思想がある。
地位や名声によって階層が分かれる人間社会も、自然の前ではみな同じ。
グリム童話には悪人や、時にグロテスクな描写、凄惨な世の常が描かれる。しかし、悪人はいつの間にか利用される哀れ者になっていたり(ラプンツェルの魔女、灰かぶりなど)、善人は悪人になったり(靴はき猫の3男など)、価値転換が何度も起きる。
善悪とは何なんだろうか。先の通り、自然の前では善悪など実は人間が作り上げる概念でしかないのかも知れない。
自然を神と捉えたのが宗教だとすれば、神の子イエス・キリストが悪人も寛大に見守ったことはある意味で真っ当なことだろう。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2021年8月19日
- 読了日 : 2021年8月18日
- 本棚登録日 : 2021年8月18日
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