ザリガニ: ニホン・アメリカ・ウチダ (岩波科学ライブラリー 162)

著者 :
  • 岩波書店 (2009年9月18日発売)
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<始まりは20匹だった!?>

思いがけずザリガニと濃い~関係(?)となって数ヶ月(顛末は『ザリガニのかいかたそだてかた』http://booklog.jp/item/1/4265059090に。よろしければご参照下さいませ)。
ザリガニについてさらに知ろうじゃないの、というわけで、ザリガニ本・第2弾です。

世界や日本におけるザリガニの分布、歴史の中のザリガニ、その生態と生活史、環境から見たザリガニについて、わかりやすく読みやすくまとめた本です。

興味深い話が満載です。
・世界には多くの種類が生息していますが、日本ではニホン・アメリカ・ウチダの3種。本州(特に関東以南)で見られるのは、ほぼアメリカザリガニです。

・ザリガニの体内に形成される「胃石」と呼ばれる錠剤様の結石は、江戸期には薬と目されていました。これは脱皮の際に不足するカルシウムをあらかじめ体内にためておくしくみであるようです。残念ながら薬効成分はありません。

・江戸期の図版や標本も掲載されています。中でも興味を惹かれるのが栗本瑞見の『千蟲譜』。美しい絵でザリガニ以外の記述も楽しそう。それにしてもザリガニって虫なんですかね(ヘビも長虫とか言うしな・・・)。
古い標本には「砂利蟹」とラベルのあるものがあります。「じゃりがに」も「ざりがに」の語源の1つの説ではあるようです。

・ザリガニの体色は一般的には赤ですが、餌次第で青や白のザリガニが得られるとのこと。赤い体のザリガニに白い足を移植したらどうなるか、なんて研究も紹介されています(ちなみに足は赤くなります)。

・後頭部には「平衡胞」と呼ばれるくぼみがあり、ここに小砂利を入れてバランスを取っているのだそうです。脱皮するとこの石がなくなるため、平衡感覚が崩れます。石を入れれば元に戻ります。脱皮直後のうちの母ザリがひっくり返っていたのはこのせいだったのかー。

日本におけるアメリカザリガニはそもそも、ウシガエルの餌として鎌倉に導入されたわずか20匹が始まりだそうで、繁殖の果て、全国に広まったのだそうです。
繁殖力が非常に強いことがバッドニュースだとすれば、グッドニュースは、最終的には「食べられる」ことでしょうか・・・。アメリカザリガニの故郷ルイジアナではゆでザリガニが郷土料理として知られるそうです(写真もありました。ナカナカ壮観です)。大正天皇即位の際も供された(こちらはニホンザリガニですが)そうなので、それなりにおいしいのではないかと思います。

また、稚ガニ時代の共食いは非常に激しいとのこと。100を超えていたわが家のチビザリたちも二桁台まで落ちました。稚エビを生き残らせる手段については書かれていますが、稚エビが「残りすぎた」場合はどうするかといった話はないので、数匹で落ち着くのが一般的なのかもしれません。100匹成体になったらどうしようかなーとちょっと思っていたので、ちょっとだけ安心。
このまま飼育して、増えすぎたら食べればいいのだ!?と腹が据わりました。

ザリガニは意外とアマチュア研究者が多いそうです。筆者も研究職ではあるのですが、専門は別にあり、ザリガニに関しては「日曜研究家」だとのこと。
愛好家による国際大会やウェブサイトの紹介もあり、ザリガニワールド、なかなか楽しそうです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 生物
感想投稿日 : 2012年4月10日
読了日 : 2012年4月10日
本棚登録日 : 2012年2月29日

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