河鍋暁斎戯画集 (岩波文庫 青 560-1)

著者 :
制作 : 山口静一  及川茂 
  • 岩波書店 (1988年8月16日発売)
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感想 : 14

河鍋暁斎は、幕末から明治にかけて活躍した浮世絵師である。
時代の激動の中で、多くの絵師たちが後ろ盾を失って没落していく中、卓抜した画力で人気絵師の座を誇り続けた。
反骨・批判精神の強い人で、その筆は鋭く世相を抉り、あまりに冴えすぎていたためか、諷刺の戯画を理由に投獄されたこともあるという。

解説に、カラスの写生法のエピソードがある。カラスをまずじっと見つめる。脳裏に刻んで別室で描く。わからなくなったらまたカラスを観察する。そしてまた室に戻って描く。これを繰り返すうち、目の前のカラスからでなく、自分の記憶の中のカラスを描き取ることが出来るようになったという。日々の修練で鍛え抜かれた筆である。

そんな暁斎が描く戯画を集めた1冊。
西洋かぶれ。欲深。ものぐさ。虚栄。
七福神を役者のように使い、骸骨を踊らせ、子供を生き生きと遊ばせる。
鍾馗は鬼を退治するものだが、見方を変えれば平和に暮らしていた鬼のところにやってきた鍾馗はただの侵入者かもしれないといった逆転の発想もある。

暁斎は、筆を刀代わりに、変動する世相に「やっ」と立ち向かっていく真剣勝負をしていたのだ、と思えてくる絵である。


*シルクハットをかぶろうとする福禄寿が笑える。

*文庫本なので仕方がないのだが、絵が小さくて一部見づらい。細かいところがある絵は少々つらい。・・・老眼・・・?

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 美術
感想投稿日 : 2013年5月9日
読了日 : 2013年5月9日
本棚登録日 : 2013年5月9日

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