ごん狐

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  • 2012年9月27日発売
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感想 : 23

新美南吉(1913-1943)の代表作の1つ。
国語教科書の定番である。

物語は「村のおじいさんから聞いた」という体裁である。まだお殿様のいたころというから、舞台は江戸の終盤頃だろうか。
村の近くの山の中に、1匹のきつねが住んでいる。名前は「ごん」。ひとりぼっちの小ぎつねである。ごんは時々村に出てきてはいたずらをする。村人からすれば困りものである。
ある時、ごんは村の兵十が魚を取っているところを見つける。ごんはいたずらして、兵十が取ってびくに入れた魚を次々と逃がしてしまう。最後のうなぎと奮闘しているところを兵十に見つかり、ごんは這う這うの体で逃げる。
それからしばらくして、ごんは村でおとむらいがあるのを知る。ひがん花の咲く中、野辺の送りを見守って、ごんはそれが兵十のおっ母であったのを知る。
ああ、あのうなぎは兵十がおっ母に食べさせようとしたものだったのか。
そして、あんないたずらをしなければよかった、と後悔するのだ。

ひとりぼっちの小ぎつね。ひとりぼっちになった兵十。
ごんは兵十にせっせと栗やキノコを運んでやるようになる。
同情とも友情ともつかない、どこか不器用なその思いは、兵十に届くようで届かない。
そして最後にもう1つ、取り返しのつかない悲劇が起こる。

悲しいお話である。やるせないお話である。
この後、兵十はどうしたろう。
土手に、赤いひがん花がゆれる。


*よく知られているのは「ごんぎつね」の表記の方だと思いますが、青空文庫(初出は「赤い鳥」、底本は岩波文庫版)では「狐」の表記になっています。常用漢字ではないため、教科書では「きつね」の表記に変更されて、そちらが広まったものでしょうかね。南吉の草稿では「権狐」だったようです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 児童書
感想投稿日 : 2021年1月22日
読了日 : 2021年1月22日
本棚登録日 : 2021年1月22日

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