朝日ぎらい よりよい世界のためのリベラル進化論 (朝日新書)

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  • 朝日新聞出版 (2018年6月13日発売)
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朝日というかリベラルが常に劣勢なのはなぜかという話。著者が解説するその理由は実に判り易い。↓
現在の世界では急速にリベラル化が進み成果を上げ、結果リベラルは敗退している。
つまりリベラル化は奴隷制やアパルトヘイト(少し前までは何処の国でも似たようなものだった)など、普通に考えれば善悪のはっきりしている殆どの問題を解決するという大きな成果を上げた。その結果残った問題は経済格差や安全保障、温暖化・脱原発など簡単には善悪を付けられない問題ばかり残ってしまった。リベラルは世界的に勝利したことで敗北したのである。
日本で云うネトウヨ的な主張は世界中で拡大しており、その発祥はアメリカにおいてリベラルの基準から逸脱した白人の田舎者。彼らに共通するのはアメリカから見捨てられたという怒り。
白人という立場は彼らにとって何の努力の必要もなく手に入れられるものであるから、トランプ支持者みたいな人には唯一のよりどころ。日本のネトウヨにとってのそれは日本人という肩書だけが誇れるものであり、それを覆す外国人参政権などの政策には必死で反対する。
また彼らが中国・韓国に異常にこだわる理由は、日本人がアジアで最も優れた民族であるという優越感を、中韓があらゆる方面で覆しつつあるという事。これはまた白人コンプレックスの裏返しであり、だからこそケントギルバートなどによる嫌韓本が彼らによく読まれる。
人間として道徳は6つある。1.安全2.公正3.忠誠4.権威5.神聖6.自由。それぞれが保守とリベラルでは受け止め方が異なるが、これらは人間の本性から生じてきた。しかし典型的なリベラルは3.共同体への忠誠4.権威への追従5.神への崇拝をバカにしてきた。つまりリベラルは6つの味付けの内3つしか使えない。6つの味付けができる保守が作った料理に大衆が魅力を感じるのは明らかであり、世界では保守がリベラルを圧倒する結果となっている。
ただ、どの国でも保守はその国内だけで支持されるのみで、グローバルでは他国に支持されないため(日本は事実上アメリカの属国なので、その立場を受け入れている人々にはトランプが好かれているのだと感じる)、グローバリゼーションの中ではリベラルが強い。
さらに日本だけがリベラルな愛国者という立場を否定してきてしまった。これは日本のリベラル政策の失敗。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2023年4月2日
読了日 : 2023年4月2日
本棚登録日 : 2018年6月20日

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