上巻は前後する時制に最初は戸惑う。覚え辛い固有名詞も多く、宗教改革が主題なだけに教義や聖書からの引用など、読者に知識的下地がないと真の理解には達しないのかもしれない。だが、エンターテインメントとしては自分にでも充分にたのしめた。各章の始めに日時と場所が示されていた事が非常に助けとなった。何度も既読章を読み返し、辻褄を合わせていく作業は大変だけど楽しかったし、Qの手紙(後半においては日記も)の挿入のされ方も絶妙だった。ローマカトリック教会による圧倒的支配が、中世初期にくらべて盤石でなくなってきている時代において、カラファをそこまで突き動かしたものは何だったのだろう。
また、主人公は毎回似て非なる教義に身を委ねているが、彼を突き動かしたのが権力への反骨精神であったのなら、Qは?自分の傍らで共に闘った忠実な部下としての日々が最も幸福な時間であったのだろう。他人の人生で闘っていたことが君の敗北だ。という主人公の言葉が、恐らくQの自認する真実なのだ。Q探しも読者として楽しかったが、時を経て再会する老いた仇敵同士の関係が心に沁みる。それにしても、なんと多くの命が失われたことか。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
海外ミステリー
- 感想投稿日 : 2014年6月30日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2014年5月15日
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