わが愛しき娘たちよ (ハヤカワ文庫 SF ウ 12-1)

  • 早川書房 (1992年7月1日発売)
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本棚登録 : 191
感想 : 27
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コニー・ウィリスの傑作短篇集は全11篇収録。うち「見張り(後に「空襲警報」と改題)」と「クリアリー家からの手紙」は既読でしたが、十分楽しめる一冊でした。

やはり注目すべきは、超問題作とされる表題「わが愛しき娘たちよ」。解説の山田和子氏の言葉を借りると、「性と権力の構図をストレートにとらえた作品」、「男性読者の多くに大変な反発を引き起こし、同時にフェミニストたちからも批判を受ける」作品のよう。ジェンダーやらフェミニズムやらにてんで興味のない、いち読者ではありますが、この作品は一見するとややこしいところがなく、男に抑圧される女の構図がストレートに描かれているように思えます。が、読後は「どこか捉えどころのない作品」との感想で、なんだかもやもやした気分でいっぱいになりました。このあたりが著者の妙技なのでしょうが、少なくとも単純に「女を虐げる男社会への批判」を描いているのではない気がします。

さて、それ以外の作品でみると、とりわけ面白かったのは「鏡の中のシドン」。個人的にウィリスの作品は、本書に収録される「月がとっても青いから」のようなコミカルな作品を好むのですが、この作品のようにシリアスな作品を描けるのもウィリスの魅力かと。というのも、ウィリスは「つかみどころのない作家」とよく評されるようで、本書だけを読むと、たしかにその感想を抱かずにはいられません。個人的にはこのマルチフェイスな作品群が大好きなのです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: SF
感想投稿日 : 2016年5月8日
読了日 : 2016年5月4日
本棚登録日 : 2016年5月4日

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