中世神話 (岩波新書 新赤版 593)

著者 :
  • 岩波書店 (1998年12月21日発売)
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本棚登録 : 147
感想 : 7
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神仏習合下の中世において語られていた日本神話、所謂「中世神話」を紹介した書。伊勢神道における「天地開闢」、「国生み」、「天孫降臨」の物語を中心に、中世神道が古代(記紀)神話をどのように変換していったのかを概説する。
本書は、中世神道書などに見える日本神話を具体例を挙げて紹介したものである。主に取り上げるのは伊勢神道系の神話であり、水と葦(霊物)による天地開闢、外宮祭神豊受大神の変容、大日如来の印文発見譚と天の瓊矛の変奏、「杵の王」としての天孫など、記紀神話のテーマを用いながらそれとは異なった神話世界を活写している。これらのエピソードは追っていくだけでも楽しく、豊受大神が本来の神格(御饌の神)を捨てて根源神(天御中主神)として語られていく経過、独鈷や心御柱、果ては創世の物実たる「霊物」となっていく天の瓊矛の様相など、中世神話の多様な側面を見ることができる一書となっている。話が様々な方面に飛びがちな点はあるが、中世神話の世界に触れるには最適の書であるといえる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本神話
感想投稿日 : 2014年3月25日
読了日 : 2014年3月25日
本棚登録日 : 2014年3月17日

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