クトゥルー 6 (暗黒神話大系シリーズ)

制作 : 大瀧啓裕 
  • 青心社 (1989年8月1日発売)
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感想 : 2
3

 ラヴクラフトを敬愛していたオーガスト・ダーレスは彼の死後、ラヴクラフトの知名度向上、そしてクトゥルフ神話の布教に生涯を費やしました。その一環として多くのクトゥルフ神話作品を執筆したのですが、その中にはラヴクラフトの遺稿や創作メモが核となっていた作品も多数ありました。
 6集は、そうしたラヴクラフトが原案とされるダーレスの作品、2本の短編と1本の長編を収録。
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『恐怖の巣食う橋』(ラヴクラフト&ダーレス/1967)
 二十年前に失踪した大叔父の家に移り住むことになったわたし。地元の雑貨店でその旨と自身が大叔父の身内であることを店主に伝えると、彼はあからさまに嫌悪感を示す。家の掃除と整理の最中に謎の地下空間を発見したことを契機に、大叔父の失踪の謎を探り始めたわたしは、川の側に石造りの橋の残骸を発見する。その橋桁の一本には奇妙な五芒星形の印が刻み込まれていて――。
(ダニッチを舞台にした妖術師もの。『ダニッチの怪』との繋がりを感じさせる内容だが、神話色は薄い。)

『生きながらえるもの』(ラヴクラフト&ダーレス/1954)
 古物収集家のわたしは、プロヴィデンスにある古い館を一目見て気に入り入居を決める。興味本位でかつての館の持ち主の経歴を調べると、どうやら不老長寿の研究に熱心に取り組んでいたようで――。
(プロヴィデンスを舞台にした狂科学者もの。研究の一環でクトゥルーや深きものなどの調査をしたと思われる描写はあるが、神話色は薄い。)

『暗黒の儀式』(ラヴクラフト&ダーレス/1945)
 かつての先祖の土地に移り住んだデュワート。興味本位から先祖のことを調べるうちに、先祖の周辺で奇妙な殺人事件や失踪事件がが頻発していたことを知る。先祖の意味不明ながらも深長な遺言に記されていた森の中にある石塔を、遺言に背いて手を入れてから何者かの視線を感じるようになり、更に過去に起きた事件を彷彿とされる殺人事件が再び起きたことから、デュワートは従弟のベイツに助けを求める手紙を出す。
 しかし、いざベイツが訪れると、デュワートは人が変わったように彼を早く帰そうとしてくる。その豹変ぶりを疑念を感じたベイツはデュワートが集めた資料に目を通し、塔が何らかの禍々しい儀式に使われていたことを理解する。そしてついにデュワートが塔で異界の怪物を召喚する様を目撃したベイツは、その道に詳しいミスカトニック大学のラファム教授に助けを求める。
 ラファム教授は全てを終わらせるために入念な準備をし、助手のフィリップスを伴って彼の地に向かう。そして彼らが目撃した、恐るべき外世界の存在とは――?
(ダニッチを舞台にした妖術師ものの大作。主役らしい主役がおらず、結末のあっけなさなど物足りなさはあるが、召喚の呪文や召喚された神話生物の描写など、要所要所の読みどころは多い。)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 本#933:クトゥルフ神話
感想投稿日 : 2021年6月12日
読了日 : 2021年6月12日
本棚登録日 : 2021年6月12日

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