新版 絵はがきにされた少年

著者 :
  • 柏艪舎 (2020年10月28日発売)
3.57
  • (1)
  • (2)
  • (4)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 50
感想 : 6
4

 コロナで旅行できないので(海外に行きたいわけじゃないが)外国についての本を読もうと。
 1995-2001まで新聞社駐ヨハネスブルグ特派員だった藤原章生さんの本。カルチャーショックと言うのか、無知で申し訳ない気分。
「"inquisitive" (知りたがり)なのとそうでないのと、どちらが良いんでしょうか」という言葉が印象的。世の中で何が起きているのかを知ることは大事だし、そのような教育を受けてきたような気がする。でも、教育も情報もお金もなければ知ることになんかあまり意味がないかもしれない。
 日本人はアフリカで「名誉白人」のような立場らしい。特権階級であり、同じく白人に対する憎しみも受容することになる。差別される側、搾取される側の黒人たちは白人たちに本当のことを言えない(言わない)という。いくら現地の人の本当の思いを知ろうとしても「名誉白人」の立場であり(その土地に生まれ育っていないという意味で)外国人である著者には限界がある。
 アフリカに人種差別の歴史と生活があって、そこから遠く離れた特殊な島国の日本人。まるでアフリカの人から "inquisitive" であることを責められているような気持ちになる。知ってどうする、何が分かったのか、と。それでも、アフリカのほんの一面でも知れたことで、マシな人間になった気がする。それがやっぱりとても大事なことじゃないかな。個人レベルの平和貢献だとさえ思う。
 それにしても南アフリカの治安の極悪さに恐れおののいた。藤原さんご夫婦が無事で何より。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年9月23日
読了日 : 2021年9月23日
本棚登録日 : 2021年9月23日

みんなの感想をみる

ツイートする