永井博士が長崎被爆当時を記録した本。
先日読んだ、『この子を残して』ほどキリシタン色は強くなく、こちらはただ淡々と(ときに自己の感想を織り交ぜながら)、長崎原爆の日からの長崎医科大学のスタッフたちがいかに懸命に人命救助、原子病研究にあたったかについて描かれている。
それにしても、先日読んだ『ヒロシマ日記』と比べると、原子力(放射線)の知識についての有無でここまで治療に差があるものなのだろうか。と感じさせる点が多々あった。『ヒロシマ日記』の蜂谷氏は患者に次々と襲ってくる未曾有の症状にたいして、行き当たりばったりで対処療法を行うしか術がなかった。
それに対して、永井博士は元々放射線を専攻しており、被爆直後の米軍のビラで原子爆弾であることを知るや否や、大学のスタッフたちと「アメリカではどのような研究が進められているのか」「今後どのような症状を起こす患者が増えるのか」について、ある程度予測し、治療しつつ研究に当たっている。
持つべきものは、文献や資料、宝物などではない。人間、本当に身動きが取れなくなったときに、財産となるのは知識と技術だと感じさせられた。
やはり、どの職業においても、専門職である人間は日々の自己研鑽を積むべきである。
それから、家族についての記述が見つからなかったのが意外だった。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
エッセイ
- 感想投稿日 : 2011年9月25日
- 読了日 : 2011年9月25日
- 本棚登録日 : 2011年9月24日
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