ヤクザと原発 福島第一潜入記 (文春文庫 す 19-1)

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  • 文藝春秋 (2014年6月10日発売)
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ヤクザ記事を専門とするルポライター・鈴木智彦さん
ヤクザと原発について調べるために自ら原発作業員となって福島原発のF1に潜入して書いたルポ。

「ヤクザもんは社会のヨゴレ、原発は放射性廃棄物を永遠に吐き続ける。似たもの同士なんだよ。俺たちは。」

原発の作業員を集める仕事、建設現場での土木仕事、原発誘致に反対する人々への圧力、原発をつくって村の存続を願う人をまとめる仕事、原発事故の土地での墓の移転、農地移転、電力会社、建設会社、下受け、孫請け…様々なところにヤクザの仕事がある

つまり原発は「大きなシノギ」になる

2011年3月12日に福島第一原子力発電所が水素爆発を起こした。東北の大震災で起こった「想定外の」大きな津波が原子力発電所を襲ったからだ。

F1と呼ばれる原発事故後の現場に入る人にしかわからない作業の杜撰さ、なんだかんだ言って全く謝罪の気持ちのない上から目線の電力会社、情報弱者の現場の人夫たち、見えないからこそ恐ろしい放射能の恐怖
それらは現場を見ないと書けない。
放射能で汚染された水を浄化する施設に流すために汚染水のすぐ横で働く作業員
原発バブルでにぎわうソープ街
造血幹細胞の保存を支持した谷口プロジェクト
そしてそれを無駄と言い切った国や東電

「ヤクザが原発をシノギにできるのは暴力団を含む原発村が地域全体を丸のみすることによって完成しているから」と鈴木さんが書いていることがすごく納得がいく

田舎に原発が多い
そのカラクリもよくわかった

すごいルポだった!
まさに鈴木さんでなければ書けなかったルポだと思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年12月9日
読了日 : 2020年12月9日
本棚登録日 : 2020年12月9日

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