フィクションとしての面白さ以上に、はたしてこれを絵空事としておけるのかという恐怖を感じる。
50年近く前の情報と時代背景に基づいた小説であるため、エネルギー環境は劇的に変化している。
石油への依存は依然として高いものの、その供給元は中東のみのかつてに比べると、アメリカを含めて多様化している。
しかし、はたしてその多様化した石油供給に何か安全性を求める根拠があるのだろうか。
エネルギーの一部を原子力に頼る政策もあったが、そのエネルギー体制は、震災とともに崩壊してしまった。
地球環境の変化を考えると、化石燃料の利用の再検討が迫られている。
この10年ほどの間に、私たちは、その経験から私たちの生活を支えるエネルギー供給の脆弱性を思い知らされた。
あるいは、生活そのものの基盤すら、安泰ではないことも確認した。
小説の中で起こる生活の混乱、人災をもとにする被害の拡大は、そこまで激しいものではないが、その端緒を実際に見たかもしれないのだ。
この小説から得られるのは、いくつかの知識ではなく、私たちが向き合わなければならない現実とは何か?という事だろう。
そして、私たちが現実に目を開いた時、見えてくるであろう現実の一端をここから予習できるのかもしれない。
問題が大きすぎる。
しかし、ここで心の準備をすることができる。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2019年5月4日
- 読了日 : 2019年5月4日
- 本棚登録日 : 2019年2月10日
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