ショーン・タンの字のない絵本。
アメリカ(それともオーストラリアかな?)とおぼしき国へと移住した家族たちのお話。
ひとりの男(夫であり父である)がまず、仕事を求めて船にのり、新天地に降り立つ。そこでの慣れなさ加減や文化がユーモラスに描かれる。奇妙な生き物に奇妙な食べ物に奇妙な言語。
(妻と娘は、謎の黒々とした触手がはびこる祖国で不安にさいなまれながら夫そして父からの連絡を待っている。)
そこで出会う人々がかつてこの土地に渡ってきたときの記憶もまた、男に触発されてよみがえる。どちらかといえば、思い出したくない、暗い記憶だ。
それとともに、人々の表情はつかのま歪み、目は陰る。
こうして男は徐々に生活に慣れていく。ぶじ、家族も呼び寄せることができた。この場面では、こみあげるものに抗しがたい。
とはいえ、もっともグッときたのは、男が船に乗っている場面で、いくつもある船窓から見える雲が(あるいはひとつの窓から見える、移ろいゆく雲の形かもしれない)、ひとつひとつ丁寧に描き分けられている見開きのページ。ここはちょっと、私的事情も相俟って涙腺がヤバかった。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
絵本
- 感想投稿日 : 2022年8月30日
- 読了日 : 2022年8月30日
- 本棚登録日 : 2022年8月30日
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