日本短編漫画傑作集 (5)

  • 小学館 (2021年7月30日発売)
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感想 : 3
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この巻に収められているのは、帯によると
「ビッグコミックスピリッツ」や「ヤングマガジン」が創刊された1980年から、「スーパーマリオブラザーズ」のヒットによりファミコンが定着した1985年までのものだそうだ。
日本のなかで大衆の娯楽として漫画がしっかりと位置を占めた頃の作品で、その以後に生まれた私にとっても馴染みのある雰囲気を感じた。

特に好きだった作品は以下。

「文久二年の爆裂弾」湊谷夢吉
幕末の政治闘争をする若者たちを描くが、下敷きは学生運動かもしれない。人の機微が繊細に描かれていてとても好きだった。

「夜行」泉昌之
泉昌之は、泉晴紀と久住昌之の漫画家コンビで、久住が原作、泉が作画を担当だったそうだ。久住はこの後孤独のグルメ(1994〜)を描くことになるけれど、夜行の時点でそのテーマ雰囲気ともに持っていたのだ。駅弁を選んで買って食べたら、思ったほど美味しくなくてガッカリだった、といえば早いが、ここまで面白く読ませるのは文芸の技だ。

「山本さんのおじいさんの場合」ひさうちみちお
なんとも切ない話。カレルチャペックのロボットを思い出した。ロボットの感情はどこまで育つのか考えてしまう。未だに古びないテーマだ。

「亀男」花輪和一
主人公は、平安時代の豪族の総領ながらとても臆病で亀を溺愛する「倅」。戦から逃げ帰り、父親から咎められるも、亀になりたいと一心に願い、栗の木の甲羅をつくり、亀のように過ごす。最終的に本物のカメラさながらになるが人を襲うようになり父親に殺される。奇怪さがすごい。最後の倅の表情が最高すぎる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 2023
感想投稿日 : 2023年1月15日
読了日 : 2023年1月15日
本棚登録日 : 2023年1月15日

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