ジャック・ロンドンは「野生の呼び声」と「ホワイトファング」しか読んだことことがないが、硬質でシンプルな文体と、武骨なストーリーが印象的で、好きな作家の一人だ。しかし、没後すでに100年以上経過しているので、本屋さんで新刊に巡り合えるとは思わなかった。正確に言うと新刊ではなく、帯にも書かれているよう”待望の復刊”だ。
描かれている時代背景は、富裕層と労働者層との差が明確で格差は大きい。思いがけない出会いから富裕層と関わることになった主人公は、苛烈な努力で労働者層から作家として這い上がっていく。主人公が考える真理や、手にした成功を語る心のうちは、30年前の青年(僕のことだ!)が抱く青春のモヤモヤと低通するものがあり、物語にのめりこむ。
激しいいほどに厳しく自律的で、原理から外れることを許せない青年は、年齢を重ねるうちに他者や自らを徐々に許せるようになっていく。許すことができない青年には、自死以外の結論がなくなる。
全般にわたり緊張感のある小説世界で、主人公の成長譚でもある小説の魅力に引き込まれた。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2019年1月5日
- 読了日 : 2019年1月5日
- 本棚登録日 : 2018年11月25日
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