なぜヒトは学ぶのか 教育を生物学的に考える (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社 (2018年9月19日発売)
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この本は、分かったつもりになっている事、あるいは、肌感覚として理解している事を、しっかりとした言説で言語化し、スッキリさせてくれた。

先ず目を引いたのは、人間の3大欲求についての考察。性欲、食欲とあと一つ。睡眠、排泄はそうだが、別に何か獲得が必要な外部に向けた欲の類ではない。この本では、それを学習欲としようと。生きるための知識、経験を得ること。そして、それを同じ種である人間に伝え、共有する。ここに、教育の本質があるようだ。幼児ですら、利他的に振る舞ったり、見つけたものを〝教える“行動を取る。

これが人間の形質ならば、自粛警察や論破の理屈なども分かってくる。人間のもつ社会性にはルール、つまり、知識や規範の共通化が必要であり、その適用について、人は本能的な側面を持つことから、教育が効力をもつ。学校教育に限らず、世の中のルール全てについてだ。先の自粛警察は、この本能に従い、他者への想像が欠如した形で、押し付けを行う。論破は、ルールの解釈を巡る勝ち負けの決着だ。それは、あなたの感想ですよねでは済まさず、必死に反論する事がしばしば。

こういう考え方を知ると、人間をまた違う角度で見てしまう。承認欲求、支配欲、ルールへの固執、宗教、哲学。社会性を生むための学習欲が、形を変え、もしかすると、人間社会における対立の根源の一部になっているかも知れない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2021年12月30日
読了日 : 2021年12月30日
本棚登録日 : 2021年12月30日

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