石原慎太郎の近時の態度が本書における文字の大きさに現れているようで、更には、角栄を自ら演じるかのような一人称の違和感から、本屋で開いた本を悩んだ挙句に棚に戻した。それが、5月の事で、つい9月の所用で日本に行った折、やはり興味には勝てず、とうとう買ってしまったのだ。
青嵐会や石原慎太郎を語る時、必ず固有名詞の前に〝あの″と付けたり、外交における各国の評価や歴史認識は、田中角栄のそれよりも石原慎太郎に寄せた文言も散見され、そもそも語り口が、石原慎太郎特有の癖をそのままに、つまり生真面目にやる気は無く、何か、本を残すべき一つの目的が先にあったのではと勘ぐらせる。
メディアに登場した際も、某アイドルの疑問に対し明らかな不快を隠そうとせず、政敵としての過去を取り繕おうともしない。
では、一体何があるのか。目新しい話があるのかと、ページを捲る。しかし、然程古くもない田中角栄の話、週刊誌の発言の裏付けは出てくるにしても、新情報は見当たらない。ロッキード事件に関わる暴露話かと言うと、そうでもなさそうだ。そもそも、田中角栄については語り尽くされているのではないか。
考え損か。森元孝さんという早稲田大学の教授との食事の場で、田中角栄について書いてはと薦められ、本作に至ったとの事。自らの筆力を頼っての道楽かと思ったが、後書きでその辺に触れている。田中角栄に対しての敬愛が滲み出ている。つまり、そういう事だから、某アイドルに怒ったのだろう。
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- 感想投稿日 : 2016年10月3日
- 読了日 : 2016年10月3日
- 本棚登録日 : 2016年10月3日
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