脱成長と欲望の資本主義

  • 東洋経済新報社 (2022年8月19日発売)
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トーマス・セドラチェクと斎藤幸平の対談がエキサイティングだった。二人のイデオロギーの定義が微妙に噛み合わず互いに何度か確認し合う。チェコ出身のセドラチェクは、コミュニズムに生理的嫌悪感がありそうだ。

この討論で気になったのは、共産主義、社会主義、資本主義が税率で規定されるかの論。9割税率は共産主義、社会主義は5割未満だと。一義的に言い当てているかは微妙だが、分かりやすい整理。共産主義イコールソ連の失敗例と捉えるのは誤りと斎藤幸平は言うが、税率が高いという事は、それだけ中央の権力が強いという事。集権的な体制が膠着され易く、ファシズムを生みやすいだろう。勿論、低い税率で一党独裁を成し得る国もあるから、その逆は言えないが、高税率は税金の使い道の決定権が強大化するのだから、強権的になるはずだ。

対して、資本主義は基本的にコモンを解体し、富を独占することで人為的に不足を生む。これが金儲けを可能にする。私有の富の増加は共有の富の減少を伴う。これがローダーデールのパラドックス。すなわち、資本主義は、権力を国家ではなく、資本家に言い換えているだけだと。GAFAMのようなプラットフォーマーを見ると、その言い分もわかる。

人間が絶えず富を求め欲望が生まれる一因は社会システムにあると、ブランコ・ミラノヴィッチ。脱商品化、過剰な広告の禁止、行き過ぎた所得制限の禁止など、ガチガチの共産主義者ではない、マイルドな提案を斎藤幸平。セドラチェクの発言。欲望を仮想空間にエクスポートする。学びや物質も。持続的成長、平等化の鍵になるだろうと。そうなれば面白いと思う。

もっと、競争は緩やかに、弱者に優しい社会は作れるはずだ。しかし、それには、国と国の利害対立を調整する装置機構が必要。オンラインに理想国家を実現しても、最後は、肉体に限界あり。難しい…。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2022年12月7日
読了日 : 2022年12月7日
本棚登録日 : 2022年12月5日

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