なぜ貧しい国はなくならないのか(第2版) 正しい開発戦略を考える

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  • 日本経済新聞出版 (2020年3月14日発売)
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感想 : 12
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開発経済学って何?という人向けの入門書。
淡々と課題を分析、考察しながら進むが、序盤はデータの解説がメインで、それが非常に良い。

「人生の質」の指標、と著者が言う定量データ。乳幼児死亡率、平均寿命、就学率、貧困者比率。世界銀行の定める貧困ラインは、1日あたりの所得が1.25ドル。

この問題を分析するに、次に見ていくのが、産業構造の国際比較。どの先進国も、農業国からスタート。それが豊和してくると、胃袋には限界があるから、農業の増加率は緩慢になる。所得が増えれば、次は工業製品需要へ。物資が満たされれば、より良い教育、旅行などのサービス。だから、先進国ほど、農業、工業に比べサービス業の比率が高くなる。こうした流れを成立させるには、国民の教育レベルがある程度必要だし、汚職に塗れぬ民主的な政府が必要。これが難しい所。

開発経済学の用語だろう、雁行形態論という考えを初めて知った。これも産業構造の移行を示す考え方。労働集約的から、資本集約的、最終的に、知識集約的発展というモデル。この段階は、経済発展に不可欠なのだという。

本著には書かれないが、結局は、日本も戦国時代を経て外圧に備えた近代化や統一に成功したから民主化を成し得たし、中国は民主主義ではなくとも、共産主義による統制下で国家資本主義に転じられた。しかし、政治が混乱する国はいまだ多く、それが貧困の元凶。経済発展のために、先ずは政治モデルが必要だろうが、発展しない国の文化や国民性が弊害、あるいは先進国とはそもそも価値観が異なるという事もあるのだろう。必ずしも押し付けが良いわけではない。これもまた、難しい所。

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感想投稿日 : 2022年4月3日
読了日 : 2022年4月3日
本棚登録日 : 2022年4月3日

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