米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く

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  • 毎日新聞出版 (2019年11月9日発売)
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この本を読むと、中国の覇権に向けた動きへの脅威をより感じるようになる。どこかで中国を馬鹿にしていた意識が変わる。当然経済的にも軍事、外交的にも無視できぬ存在だが、内政問題多く、知財もいい加減で技術力は模倣の張りぼて、共産党の強引な手法で何とか維持する状態、という理解も間違いではないが、それだけではない。

中国政府は、国家AI戦略実現のためのプラットフォームを指定。① 百度には自動運転②アリババにはスマートシティ③テンセントには医療画像認識④アイフライテックには音声認識⑤センスタイムには顔認識。これら英文の頭文字をとってBATISと呼ぶ。

国家転覆や民主化を望む中国政府にとってのスパイを発見したら、必ず政府に報告する義務をすべての中国人が負うと言う国家情報法。2022年までに中国は27.6億台の監視カメラを中国全土にはりめぐらし、13億以上の人民すべて1人につき二台の監視カメラで監視するようになる。センスタイムはAI顔認証に関して世界のトップに躍り出た企業で、2018年9月に日本のソフトバンクも10億ドル投資。企業評価75億ドルを突破してAIを手がけるスタートアップ企業として世界最大となった。全てが監視される社会。

ヘリウム3を用いると核融合による原子力エネルギーを得ることができ、核融合はいかなる汚染物質の放出しない全く無害でクリーンエネルギーだ。ただ実用化までにはまだ道が遠く、地球上にヘリウム3がまとまってあるわけではない。無尽蔵に堆積している月面を狙って資源基地を作るつもりというのが、中国の宇宙戦略。

さらに、中国が持っているアメリカ国債のことを金融核弾(金融核弾道ミサイル)と称する。アメリカが関税を追加させればさせるほど、その分だけ中国がアメリカ国債を売る頻度も量も多くなり、悪循環に入っていく。双方とも被害者となるが、持久戦である。

レアメタルは47 +2種類の希少金属からなっており、その中の17種類はレアアースと言う希土類である。中国が世界の70%を占めているのはレアアース。もちろんレアメタルの産出量も中国が圧倒的に多い。アメリカはレアメタルの約75%を中国からの輸入に頼っていると中国は笑う。

世界がコントロールできない強大な力をつけていく中国。いずれ、覇権国家と新興国家が戦争が不可避な状態になるまでぶつかり合うツキディデスの罠が訪れるのだろうか。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2023年6月11日
読了日 : 2023年6月11日
本棚登録日 : 2023年6月9日

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