比較的薄い本で、パターンブック的な内容かな?とライトノベル程度の感覚で読み始めたら、非常に明快な分析で驚いた。分析はとても腑に落ちる内容で、よくある難解な建築本とは(著者も書いているように)一線を画する。
カーンの建築空間構成を、コルビュジエ、ライト、ミース、アアルトといった20世紀の巨匠たちのプラン・空間構成と比較することで、モダニズム建築の歴史における時間軸上の位置付けと、巨匠たちの建築・空間とカーンのそれとの共通性-差異性を描いた1冊。
建築家の言説によらず、即物的に(実際の建築と図面による)建築を把握することによって、カーンの建築における空間構成の時系列的な変遷を明快に捉えることに成功している。ゆえに非常に分かり易い。
カーンの言説を分析に取り入れていないからといって、本書の内容が軽薄なものになることは全く無い。カーンの建築と空間に対する分析は的を得たものとなっていると感じた。また巻末の構成分析表は分かり易く嬉しい図版だ。
本書を読み、カーンの言説を読めば、カーンの言葉と建築、思索と建築との間にあったものをよりリアルに体感できるのではないだろうかと思った次第。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
建築・都市
- 感想投稿日 : 2010年4月21日
- 読了日 : 2010年4月21日
- 本棚登録日 : 2010年4月21日
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