邦題がずいぶんとミスリードを誘うが、イエス・キリストが実在したか否かの検証本ではなく、聖書に描かれた救世主・イエスとは異なる実像を追究した本。
米国ではベストセラーになり、ずいぶんと物議を醸したらしいが、そりゃそうだろうな。
紀元1世紀のパレスチナはユダヤ人がローマ帝国の支配に抵抗した激動の時代。
その時代に人々を扇動した、貧民出身の過激な革命家がイエスであった。
イエスの死後、パウロらによる布教活動を経る中、ローマ帝国の中でキリスト教が宗教として成熟していく中で、史実が変容して書かれていくことにより新約聖書が成立した。
…というのが著者の解釈の本筋。
本編だけ読んでも、論拠があまり明確に論じられていない(巻末の膨大な参考資料を読めば違うのだろうが)ので、その解釈の正当性を判断することはまったくできないのだけれど。
前提となる基礎知識が乏しすぎて、著者が明らかにするイエス像に衝撃を受けるとまではいかなかったが、著者および訳者の流麗な文体も相俟って、イエス像とイエスが生きた時代感が鮮やかに展開し、新鮮さを覚えたというのが正直な印象。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2019年1月6日
- 読了日 : 2015年1月17日
- 本棚登録日 : 2019年1月6日
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