4-2-3-1: サッカ-を戦術から理解する (光文社新書 343)

著者 :
  • 光文社 (2008年3月20日発売)
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感想 : 155
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「4-2-3-1」とはサッカーの布陣を示す表記方法。
数字が4つ並んでるところがポイントなんですね。
日本だと「3-5-2」「4-4-2」など「DF-MF-FW」の3段階の表記になる。
4段階で布陣を解釈しようという文化が存在しないわけです。
この時点ですでにギャップがある。

欧州のサッカーが戦術重視なのは、個人技ではブラジルに勝てないのが分かってるからだ、というのが著者の理解。
即ち、布陣・戦術というものは、弱者が強者に挑み勝利をものにするための手段、だと。
サッカーの世界では「弱者」である日本が、何ゆえ布陣・戦術というものに対してこんなにも無頓着・不勉強なのか、それでは強者に勝てるわけがないじゃないか、という強い憤りが沸々と伝わってきます。
ましてやジーコのように試合前日にスタメンを公表するような愚行には、開いた口が塞がらないとこき下ろします。

多彩な具体例をもって、布陣と戦術の実例が説明されていますが、もっとも強調されているのは「サイドを制する」ことの重要性。
ピッチの中央部にいれば周囲360度から敵がボールを奪いに来る。
タッチライン際であれば、ケアすべきエリアが半分の180度に減る。
また、ピッチ全体にワイドに拡がる陣形をとれば、相手の保持するボールにプレスをかけやすい→高い位置でボールを奪いやすい→効率的に攻めやすい。
「4-2-3-1」の「4」と「3」にそれぞれサイドプレーヤーを配し、左右それぞれ2人ずつで攻め守ることのメリットが繰り返し説かれます。
確かに、本の中でも紹介されてますが、オシム監督のときの日本代表で、左サイドに駒野と三都主を2人置いて効果的なサイド攻撃を繰り返した試合は自分も印象に残っています。

しかし、そうだとすると日本ではそういう布陣がどうして流行らないんですかね?
本当に、著者が言う通り、サッカー文化の低さゆえに、日本代表にしてもJリーグにしても監督の知見と能力に問題があるからということだけなんだろうか。
プレーヤーの方には問題ないんですかね。
まず優秀なサイドアタッカーの数が少ない。
また、サイドを厚くすればそれだけ中央が薄くなるわけで、例えば1トップが務まるだけの強靭さと巧さを兼ね備えたセンタープレーヤーがいない、とか。
あるいは、よく言われる話だけど「キャプテン翼」の影響で、日本では巧い選手はみんな「司令塔」役のポジションに偏ってしまう、とか。
人材がいないから布陣が限られるのか、布陣を工夫しないから人材が育たないのか…一概には言えそうにない気もします。

ここまで徹底してサッカーの布陣について語ったものを読んだことが無かったので、サッカー好きの素人としてはとても面白かったです。
クライフとかヒディンクとか、一流監督へのインタビューも豊富だし。
特にヒディンクに「トルシエは日本協会から幾らくらい年俸を貰っているのか?」と質問されて答えたら数日後に韓国代表監督に就任した、なんてエピソードが生々しくってよかった。
先般読んだ「日本人はなぜシュートを打たないのか?」とは全く異なる視点でのサッカー論ですが、それぞれにサッカーを観る楽しみを増してくれること請け合いです。
まあどっちにしてもテレビ観戦してるだけじゃサッカー観る目も養われないわけだけど…

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2019年1月6日
読了日 : 2008年5月19日
本棚登録日 : 2019年1月6日

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