(株)貧困大国アメリカ (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店 (2013年6月28日発売)
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本棚登録 : 1374
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巨大企業が財力にものを言わせて富を集中させ、農業、商業、果ては公共サービスや政治まで思うままに牛耳っているというルポ。効率性重視のあまり、有機生産と言われている食品まで、遺伝子組み換えがされていたり、自然の摂理に反するような環境で飼育されているという告発はショッキングだった。
しかし、ストーリーが荒っぽく、また、細部に誤りが多いことが気になった。著者もあらゆることに精通するだけの余裕はないのだろうが、「垂直統合ブーム」として描かれている内容は垂直統合のことではない(むしろ水平統合ではないか)し、「独占禁止法の撤廃」(85ページ」など行われていない。重箱の隅をつつくようだが、こういう細部がきちんとしていないと、ルポの迫力が失われる気がする。また、本書後半では、大資本とマスコミがアメリカ政治を民主党と共和党の二大政党の選択という構図に持ち込み、その他の意見を無視・封殺しようとしていると主張しているが、本書も、富める「1パーセント」とその他の「99パーセント」とアメリカ国民を2つに分けてその間に対立があるという二分法の構図で描いている。本書を読むほどに、現実はこういう二項対立の単純な図式で理解できるのだろうかという疑問を持った。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2015年3月6日
読了日 : 2015年3月5日
本棚登録日 : 2015年3月5日

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