▼世界中どこの国の国旗にもピンクは存在しない。ピンクは愛国心や血なまぐささから心理的に最も遠い色であることが、文化を越えて共有されていることの現れである。(p.35)
▼彼女たち[アンチ・ピンク派]が懸念しているのは、ピンクそのものより、ピンク色の玩具に込められた意味にあるのだから。もっとも多い批判は、お世話、家事、美容といった従来の性別役割分担を踏襲するピンク色の玩具で遊ぶことで、低賃金労働、無償労働に追いやられてしまうのではないかといったものである。(pp.95-96)
▼[過酷だったり低賃金であったりしても大半の女子がピンクの道へ進む]第三の理由としては、「無垢な美少女」「尽くす母親」といった自我や欲望を持たぬ女性を理想像として刷り込まれて育った日本の女性は、自分の欲望を見つめることに慣れていないことが挙げられる。自分の能力への自信、キャリア願望、承認欲求などを恥じる人は、「自分は客観的に見て何に向いていて、本当は何をしたいのか、そのために何をするべきなのか」を突き詰めて考えないまま大人になる。そして、周囲の期待する女性像にわが身を添わせてしまうのだ。
繰り返すが、ピンクカラーを目指すこと自体が間違いなのではない。問題は、女性の大半が狭い道に追い込まれることで、その多くが低賃金に甘んじざるを得なくなるという構造そのものである。(p.158)
▼…母性、エロ、幼さ、そして献身…日本におけるピンクは意味が何重にも重なっている。一言でまとめると「客体であれ」という期待だ。母と子の甘い世界に浸って育った人ほど、こうした期待に応えない女性への嫌悪感情をあらわにする。「女子」という言葉を嫌う人は未だに多い。すでに自分の世界を持っている女性にとって、ピンクは抑圧の象徴でもある。その手の期待が薄まる中年期以降、ピンクへの愛憎が薄れるのも、当然のことなのかもしれない。(p.190)
・須川亜紀子『少女と魔法―ガールヒーローはいかに受容されたのか』2013
・リサ・ジョンソン、アンドレア・ラーニド『ドント・シク・ピンク』(邦訳『女性に喜ばれるマーケティングの法則』)2005
(2018/8/2再読)
(2016/6/22了)
- 感想投稿日 : 2018年8月2日
- 読了日 : 2016年6月22日
- 本棚登録日 : 2018年8月2日
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