Ank: a mirroring ape

著者 :
  • 講談社 (2017年8月23日発売)
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感想 : 87
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これは凄い。

類人猿の生活と研究、女性海外記者の過去、京都の類人猿研究センター総責任者の鈴木望、そして京都での大規模な暴動。
それぞれのストーリーを挟みながら、この暴動の原因を解明していくのだが映画を観ているようだった。

人類の進化、なぜ私たちが今こうやって地球上でトップに君臨して生活できているのか。
猿やチンパンジー達との決定的な分岐点は何だったのか。
ものすごく難しい話だが知識のない私でもスッと話が入ってきて(理解できないところはあるけれど)、とても読みやすい。

それにいま現在、世界中に猛威を震わせているコロナウイルスのように、人間を恐怖に陥れる存在は何もウイルスだけではないのだという衝撃。

実際、こんなことが起こってしまったらウイルスより怖い。。
ウイルスは原因不明だとしてもそこに「ウイルス」という確信的なものがあるから。

でも、この小説のように、過去、まだ人間というものが存在する大昔の進化の過程で封印された遺伝子が原因なのだとしたら、、、!!!

そんなの研究者でも最上級の研究者しか分からないだろうし、話の中でもあったようにSNSが流通している現代、“音”を通して暴力的になってしまうならもう防ぎようがない。
情報はTwitterなどですぐ拡散されてリアルタイムの情報はすぐ手に入るから。。

これを読んでて悲しいのは、誰も悪くないということ。
確かにアンクにこの力を呼び起こさせてしまった望は周りから見たら悪い科学者なのかもしれない。

けれど、そこはただ進化の謎を解き明かしたいという、純粋な好奇心があっただけ。
アンクだって平和に森で暮らせていればこんな事態を引き起こさずにすんだのに。。

ダニエルキュイもそう。
彼はすごく望に信頼を寄せていたんだろうなと最後、読んでいて感じた。

シャガが生きていてホッとしたし、彼がアンクを追いかけている様子は過去と現代の遺伝子の闘いのようで、これは研究者の望は震えるほど興奮しただろうなと思った。

エピローグ後の著者・佐藤究さんがシャガを描くにあたって取材させてもらった御礼のコメントを読んで、望を想い、少し切なくなった。

映画化して欲しいけど、暴動のシーンはなかなかエグそうだから難しいかもなぁ、、

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年9月24日
読了日 : 2023年9月24日
本棚登録日 : 2023年9月8日

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