戦後の日本において、下水道という設備がいかに整備されてきて、それがどのような問題を孕んでいるのかというのが主なテーマです。
「大型の下水処理施設とそれに繋がる下水道の整備こそが都市のあるべき姿」という印象に対し、データを用い反論しています。
これについては僕自身もそのような幻想を持っていたので、改めて考え直す必要があると感じました。
著者の行ってきた反建設省の行動もいろいろと述べられており、一方で研究者として、あるいは大学に所属する研究員としての難しい立場も描かれており、なかなか興味深いです。
それゆえに、一部思い入れが強すぎる、感情的な表現も見受けられなくはないですが、文章の信頼性を揺るがすまでではないと感じました。
なんでこんな表現を使うのか?とか、このデータはそんなに単純に評価してよいのか?とか、恣意的なものはやはりあるでしょう。それでも学生とともにどのように問題に取り組んできたかがよくわかる内容ですし、何より生じた疑問を明確にしているので、読者にも問題意識というものが芽生えるような内容です。
汚いものを隠すように造られてきた下水道に関して、この本が書かれてから30年以上経過し、どのように日本は変わってきたのか、本当に正しい変化をしているのかは、これを読んだ我々が考えなくてはならないことでしょう。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
水
- 感想投稿日 : 2012年5月17日
- 読了日 : 2012年5月17日
- 本棚登録日 : 2012年5月13日
みんなの感想をみる